パートだと思って舐めましたね 【第6話】 フロアが止まったあの日
夜のコピー室。吉田課長が古い見積りの控えをカバンに隠すのを、直美は見てしまった。
パートだと思って舐めましたね 【第6話】 フロアが止まったあの日 のあらすじ
夜のコピー室。吉田課長が古い見積りの控えをカバンに隠すのを、直美は見てしまった。改竄を知り、保身のために証拠を握りつぶした——構図は固まった。その夜、彼女は古い名刺の番号に電話をかける。三日後、北和フーズの宮原専務が来社。応接室に入らず、フロアをまっすぐ歩いて直美の机の前で深々と頭を下げた。「パートのおばさん。この方をそう呼んでいるんですか」。
ここまでのあらすじ(第1話〜6話)
【第1話】 専務が頭を下げた相手 その日、会社の空気が止まった。大手取引先の専務が、フロアでいちばん地味な机——事務パートの直美に深々と頭を下げたのだ。半年前まで「パートのおばさん」と呼ばれていた私に、なぜ。話は半年前にさかのぼる。お茶くみと雑用の毎日、名前も覚えない自称エースの坂口、彼のごきげん取りが仕事の吉田課長。見下される日々の先に、何が待つのか。
【第2話】 数字を読んでしまった目 「丸く収めてよ」が口ぐせの吉田課長に雑用を押しつけられる日々。ある日、坂口が投げてよこした最大手・北和フーズ向けの見積書に、直美の手が止まる。原価より安い売値——売るたび赤字になる数字の違和感を、彼女は黙って頭の引き出しにしまった。給湯室では唯一名前を呼んでくれる京子さんが「あなた、ただのパートじゃない気がする」と微笑む。その直感は、正しかった。
【第3話】 冤罪と桜色のブローチ 月末、北和フーズへの発注書で桁違いの大事故が起きる。作ったのは坂口。それを見ていた直美が証言しても、課長は「記憶だけでは決められない」と握りつぶし、罪は京子さんにかぶせられた。一週間後、京子さんは退職届を出す。「あなたは負けないでね」——桜色のブローチがロッカーの前で揺れて、消えた。翌日、坂口の毒の一言が、直美の中の何かを変える。
【第4話】 この会社は年を越せない 「その言葉、そっくりあなたに返る日が来る」——静かな予告を胸に、直美は夜の会社で古い名刺を見つめる。北和フーズ専務・宮原博。まだ、その時じゃない。京子さんが去ってから、彼女は週に二度ファミレスで会社の決算書を読みはじめた。売上は三年連続減、借金は半年で詰まる。この会社は年を越せない。そして語られはじめる、直美が封印した過去とは。
【第5話】 取引停止、最後通告の朝 「会社を残してくれてありがとう」——自分が切られたのに頭を下げたあの人の顔が忘れられない。数字で人を切りたくないから、直美はただのパートになった。だが嫌な前ぶれは続く。北和フーズからのクレームを坂口は放置し、年明け、ついに取引停止をちらつかせる通知が届いた。社長は銀行に走り、火をつけた本人は真っ先に逃げ支度。そして直美は、決定的な場面を見てしまう。
【第6話】 フロアが止まったあの日 夜のコピー室。吉田課長が古い見積りの控えをカバンに隠すのを、直美は見てしまった。改竄を知り、保身のために証拠を握りつぶした——構図は固まった。その夜、彼女は古い名刺の番号に電話をかける。三日後、北和フーズの宮原専務が来社。応接室に入らず、フロアをまっすぐ歩いて直美の机の前で深々と頭を下げた。「パートのおばさん。この方をそう呼んでいるんですか」。