パートだと思って舐めましたね 【第10話】 桜色のブローチ、再び

三か月後。取引は続き、銀行もうなずき、会社は息を吹き返した。

カフェで直美が京子さんに「戻ってきてください」と告げるシーンの漫画 三か月後、会社が息を吹き返しパートを続ける直美のシーンの漫画 再建担当の肩書きを得て五月のカフェで京子さんと再会するシーンの漫画
「あなたそんなすごい人だったの」と京子さんが目を丸くするシーンの漫画 正式な契約での復職を京子さんにお願いする直美のシーンの漫画 冤罪を会社が認め謝りたいと伝える直美のシーンの漫画
「もう58よ、今さらいいの?」に「年齢は関係ない」と言い切るシーンの漫画 外せなかった桜色のブローチへの思いを涙声で明かす京子さんのシーンの漫画 「もうお守りはいりません。味方がいますから」と微笑む直美のシーンの漫画 坂口は倉庫係へ、吉田は降格と二人の結末を語るシーンの漫画
次の話へ 【第11話】 顔を上げる日をくれた 直美は今日も9時に出社する。お茶も淹れる、コピーも取る、再建の数字も読む。

パートだと思って舐めましたね 【第10話】 桜色のブローチ、再び のあらすじ

三か月後。取引は続き、銀行もうなずき、会社は息を吹き返した。直美はあいかわらず9時から4時のパート。肩書きに「再建担当」が加わっただけだ。五月のある日、駅前のカフェで京子さんと向かい合う。「戻ってきてください。今度は正式な契約で」。会社は冤罪を認め、謝りたいと言っている。あの日から外せなかった桜色のブローチに、涙がひとつぶ光った。

ここまでのあらすじ(第1話〜10話)

【第1話】 専務が頭を下げた相手 その日、会社の空気が止まった。大手取引先の専務が、フロアでいちばん地味な机——事務パートの直美に深々と頭を下げたのだ。半年前まで「パートのおばさん」と呼ばれていた私に、なぜ。話は半年前にさかのぼる。お茶くみと雑用の毎日、名前も覚えない自称エースの坂口、彼のごきげん取りが仕事の吉田課長。見下される日々の先に、何が待つのか。

【第2話】 数字を読んでしまった目 「丸く収めてよ」が口ぐせの吉田課長に雑用を押しつけられる日々。ある日、坂口が投げてよこした最大手・北和フーズ向けの見積書に、直美の手が止まる。原価より安い売値——売るたび赤字になる数字の違和感を、彼女は黙って頭の引き出しにしまった。給湯室では唯一名前を呼んでくれる京子さんが「あなた、ただのパートじゃない気がする」と微笑む。その直感は、正しかった。

【第3話】 冤罪と桜色のブローチ 月末、北和フーズへの発注書で桁違いの大事故が起きる。作ったのは坂口。それを見ていた直美が証言しても、課長は「記憶だけでは決められない」と握りつぶし、罪は京子さんにかぶせられた。一週間後、京子さんは退職届を出す。「あなたは負けないでね」——桜色のブローチがロッカーの前で揺れて、消えた。翌日、坂口の毒の一言が、直美の中の何かを変える。

【第4話】 この会社は年を越せない 「その言葉、そっくりあなたに返る日が来る」——静かな予告を胸に、直美は夜の会社で古い名刺を見つめる。北和フーズ専務・宮原博。まだ、その時じゃない。京子さんが去ってから、彼女は週に二度ファミレスで会社の決算書を読みはじめた。売上は三年連続減、借金は半年で詰まる。この会社は年を越せない。そして語られはじめる、直美が封印した過去とは。

【第5話】 取引停止、最後通告の朝 「会社を残してくれてありがとう」——自分が切られたのに頭を下げたあの人の顔が忘れられない。数字で人を切りたくないから、直美はただのパートになった。だが嫌な前ぶれは続く。北和フーズからのクレームを坂口は放置し、年明け、ついに取引停止をちらつかせる通知が届いた。社長は銀行に走り、火をつけた本人は真っ先に逃げ支度。そして直美は、決定的な場面を見てしまう。

【第6話】 フロアが止まったあの日 夜のコピー室。吉田課長が古い見積りの控えをカバンに隠すのを、直美は見てしまった。改竄を知り、保身のために証拠を握りつぶした——構図は固まった。その夜、彼女は古い名刺の番号に電話をかける。三日後、北和フーズの宮原専務が来社。応接室に入らず、フロアをまっすぐ歩いて直美の机の前で深々と頭を下げた。「パートのおばさん。この方をそう呼んでいるんですか」。

【第7話】 肩書きはパートのまま 「前職は大手商社の事業再生統括。100億の負債を3年で黒字に戻した方です」——専務の言葉に全員の目が直美に集まる。再建の指揮を執るなら取引は継続する。あなたにしか頼めない。直美は静かに立ち上がり、引き受ける代わりに三つの条件を出した。肩書きはパートのまま。京子さんの退職を調べ直すこと。そして、社員のクビを切らないこと。奇妙な再建会議が始まる。

【第8話】 うそは自分から崩れる 「借金は6月から返せなくなります。でも、つぶれません」——ファミレスで書きためたノートを開き、直美は再建の道筋を一つずつ示していく。そして最後に一枚の紙を机の真ん中に置いた。「この見積り、誰が確認しました? 数字が2か所書き換わっています」。言いがかりだと裏返る坂口を、原価率のひと言が斬る。さらに直美は、あの夜のコピー室の一部始終を突きつける。

【第9話】 捨てた仕事、私が拾う 経理に残る書き換え前の写し——逃げ道を断たれた二人は、みんなの前でなすり合いを始めた。それはどんな証拠よりはっきりした自白だった。頭を下げる社長に「顔を上げてください」と応じ、直美は坂口へ静かに告げる。「あなたが捨てた仕事、私が拾います」。帰りぎわ、専務が口にしたのは、直美自身が忘れていた昔の言葉だった。数字の向こうには、ぜんぶ人がいる。

【第10話】 桜色のブローチ、再び 三か月後。取引は続き、銀行もうなずき、会社は息を吹き返した。直美はあいかわらず9時から4時のパート。肩書きに「再建担当」が加わっただけだ。五月のある日、駅前のカフェで京子さんと向かい合う。「戻ってきてください。今度は正式な契約で」。会社は冤罪を認め、謝りたいと言っている。あの日から外せなかった桜色のブローチに、涙がひとつぶ光った。

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