資格の数だけ時給が上がる国で、シンママの私が見返した 【第6話】 二人なら戦える
朝には陽葵の熱は下がった。それから美咲と早紀は、夜に一緒に勉強する仲間になる。
資格の数だけ時給が上がる国で、シンママの私が見返した 【第6話】 二人なら戦える のあらすじ
朝には陽葵の熱は下がった。それから美咲と早紀は、夜に一緒に勉強する仲間になる。早紀は医療事務、美咲は3か月後の簿記試験。「負けたほうがアイスな」と競争を約束し、眠い夜は子どもの寝顔を3秒見てから机に戻る。目当ては時給——上げて、子に楽をさせる。一人の夜は長いけれど、二人なら戦える。カレンダーの6月を赤ペンで囲み、迎えた試験の朝。玄関で陽葵が差し出したのは、折り紙のお守りだった。
ここまでのあらすじ(第1話〜6話)
【第1話】 正月に笑われた私 正月の親戚の集まりで、シングルマザーの橋本美咲は従姉の由佳に「子ども抱えて借金って、一生底辺だね」と嘲笑されていた。借金の額、もらえていない養育費——由佳は皆の前で容赦なく切り込み、大人たちは笑うだけで誰も止めない。娘・陽葵の親戚づきあいを守るため、美咲は下を向いて耐える。だがこの借金の半分は、そもそも美咲のものではなかった。話は1年前、金にだらしない夫・拓也との日々にさかのぼる。
【第2話】 時給が上がる法律 「離婚してください。陽葵はわたしが育てます」——夫は借金の半分と6歳の娘を残して消えた。もう男には頼らない、自分で稼いで育てると決めた美咲だが、正月の席では由佳に「高卒で資格なし、あなたにできる仕事なんてない」と夢を見るなと突き放される。悔しさに震えた3日後、パート先の店長・佳代から驚きの話を聞く。この国には、資格を1つ取るたび最低時給が150円自動で上がる法律がある——美咲の武器が、見つかった。
【第3話】 ママも今日から一年生 「資格って何から取ればいいと思いますか」——佳代の勧めは簿記だった。勉強は高校ぶり、できるだろうかと不安がる美咲に、佳代は「できるかじゃなくて、やるの。やった分は国が数えてくれる」と背中を押す。その夜、娘の陽葵を寝かせてから古い机に向かい、中古の簿記テキストを開いた。最初のページからちんぷんかんぷん。それでも由佳の笑い声を思い出すと不思議と目が冴えた。この小さな机が、いつか親戚を見返す場所になる——だが2月、一通の手紙が美咲を追い詰める。
【第4話】 給食費が払えない夜 2月、給食費が口座から引き落とせなかったという学校の手紙が届く。財布には小銭だけ、給料日はまだ先。「ひまり、わるいことしてないよね?」と不安がる6歳の娘に「大丈夫」と笑い、美咲は台所で一人泣いた。週末の法事で由佳は「電卓たたく前に財布の中身を数えたら?」と嘲笑う。プライドを飲みこんで頭を下げた美咲に、由佳が突きつけた条件は「みんなの前で、わたしは底辺ですと言え」——お金より先に心を売れという意味だった。
【第5話】 一人で抱えないで 週明け、店長の佳代に正直に事情を話すと「給料の前ばらいにしましょ」と助け船を出してくれた。「返すんじゃなくて働くの」——その優しさに頭が上がらない一方、時給1000円のままでは娘を守れないと思い知る。3月、陽葵が夜中に熱を出した。頭が真っ白になり電話をかけた相手は、同じシングルマザーのママ友・早紀。「今から行く」と駆けつけた早紀は朝まで看病を買って出る。「一人で抱えないで、私がいる」——頼らないと決めたのは男にだった。友だちは、別なんだ。
【第6話】 二人なら戦える 朝には陽葵の熱は下がった。それから美咲と早紀は、夜に一緒に勉強する仲間になる。早紀は医療事務、美咲は3か月後の簿記試験。「負けたほうがアイスな」と競争を約束し、眠い夜は子どもの寝顔を3秒見てから机に戻る。目当ては時給——上げて、子に楽をさせる。一人の夜は長いけれど、二人なら戦える。カレンダーの6月を赤ペンで囲み、迎えた試験の朝。玄関で陽葵が差し出したのは、折り紙のお守りだった。